9.27.2008

アポトーシス

実は何を隠そう大学では分子生物学関係の勉強をしていました。といってもin vivoやin vitroと呼ばれるような伝統的な生物学の手法ではなく、in silicoと呼ばれるコンピュータを使ったモデリング手法を用いて生命現象の解明をする、なんていう随分と大層なことをやろうとしておりました。

といっても、実際には大学院にも行かず、いわばかじった程度の、勉強をしていました、なんてとてもじゃないけれども恥ずかしくて言えないレベルでしたけど。

ただふとアポトーシスのことを思い出しました。アポトーシスとは実は生命の細胞に組み込まれている「自殺」プログラムです。あることをきっかけにその細胞は自分で自分自身を殺すプログラムを発動させる、という機能があります。ガンなんかの発生を未然に防ぐのはアポトーシスによるものだという話もあります。(自身がガン化しそうになったときに自らを殺すことで、他の細胞への伝播を防ぐ)

これって実は非常に巧妙だけれども、不思議な仕組みで、なぜなら一つ一つの細胞は生き長らえるという目的に一直線に進んでいるにも関わらず、そういった細胞がたくさん集まっている環境の中では、生命システムの自浄作用のような形で、ある特定の細胞群が集団自殺を図ったりする(図ったりというか実際に死んでしまうのだけれども・・・)。よく出来てるとしか言いようがない。

なんでこんなアポトーシスのことを思い出したかと言うと、ちょうど今起こっている金融危機にアナロジーを感じたからです。一つ一つのプレイヤーは、ただ儲けるという目的に向かってひたすら突き進む中、うまく行かなくなる感じになるところで自浄作用(いくつかの金融機関の破綻=自殺)が働く。

そういう意味ではある種のハードランディングではありますが、システム的アプローチで眺めた時には実にうまく言っているのかもしれない。つまり暴走してシステム全体が崩壊、停止(=システム自体の死)を迎える前に、システムの中のガンを取り除くプログラムが発動した、というのが今回の一連の出来事なのかもしれない、と思えるわけです。

そしてアポトーシスが終了したあとは、システムとしては次のフェーズに向かう可能性も出てきます(全体としては変わらず、また同じ事を繰り返す可能性も当然のことながらありますが)。次のフェーズの全体像は、あるとすれば、まだ見えて来てはいませんが、少なくともここ暫くにおいては、暴走しそうな可能性のある仕組みが抑えられるような形に進んでいるようです。

誰もが適度にリスクがコントロールされた形で、思い思いの力を発揮して、全体としては安定した成長を遂げる、というのが理想ではありますが、安定成長が線形的に実現するなんていうことは現実世界では有り得ない。なかなか難しいです。

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