ワールド・トレード・センター
さすがオリバー・ストーン。
何人か観た人の評判は、実は、あんまり面白くなかった、というものが多かった。なので観たかったのだけれども映画館には行かなかった。
DVDが出たので嫁さんが借りてきてくれ、それを観た。
泣きました。ルディ以来。社会派ドラマではなく、思いがけずヒューマン・ドラマだった。ツイン・タワーが倒壊するシーンは(もちろん少しのカットでは入っているのだけれども)あまり外からは描かれていないし、飛行機が追突するあのセンセーショナルな場面はただの一カットも出てこない。そういったシーンは見た目が派手になるだろうし、不謹慎だけれどもある意味みんなが期待してしまうシーンなのではあるけれども、そこを触れないのはオリバー・ストーンの犠牲者に対する追悼の意であるのだろうし、またあくまでもその現場に居合わせた数多くの犠牲者達の視線で描いた作品だからなのだろう。タワーの中にいる人たちの多くは、あの象徴的な場面を見ることなく命を奪われてしまった。
政治的なメッセージが全くなかったことに安堵を覚えた。随所に記録としてブッシュ大統領であったりジュリアーニ市長(当時)であったり、政治家たちの発言は映画に取り込まれている。しかしそれは単純に事実として入っているだけである。「悪」を断じる言葉は、最後の最後にほんの一言(テロを指して)"the evil, yeah, sure"というフレーズがあるだけ。ほんとに全編を通じてこれのみ。ビンラディンなんて一回も出てこないし、その影さえ見せない。でもオリバー・ストーンが描いたのは大惨事の犠牲者への哀悼と人間の強さや暖かみ、仲間意識。
あのテロがあった時、弟が友人とニューヨークを旅行中だった。従姉妹がWTCから数ブロックしか離れていない高校に通っていた。叔父がマンハッタンで働いていた。ニュースを見た瞬間、背筋が凍った。しばらく音信は途切れていて、タワーが崩れてから数時間して、やがて公衆電話から安堵の声を聞くまで、不安でたまらなかった。テロの1年半前にニューヨークを訪れた。WTCに上った。テロの4ヶ月後にニューヨークを訪れた。グラウンド・ゼロには近付けなかった。テロから1年後の9月11日、ニューヨークのオフィスで働いていて全社で黙祷を捧げた。そういう意味で、あまり他人事ではなかったあの事件は、これからも一生心の中から消えることがないと思う。
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